2008年07月06日

知的財産管理技能検定

1.  第1回知的財産管理技能検定の学科試験と実技試験が7月6日にありましたので、受検してみました。久しぶりの試験勉強で、事前に十分な時間もなかったため、一番受かる可能性の高そうな3級を受検しました。
2.  試験は水道橋の日大法学部の建物を借りて行われました。試験自体は学科試験45分、実技試験45分(実技試験といってもペーパーテストで、学科試験では理論や基礎知識に重点をおいた設問であるのに対し、実技試験は事例問題を中心であったように思われます。)の短いものでしたが、広い教室は受検者で満杯で、この試験に参加している人たちの熱意を感じました。試験勉強から遠ざかっていた自分は、久しぶりに、とても心地よい緊張感を味わうことができました。マークシートを鉛筆で塗りつぶす作業が慣れていないと以外と手間取ることに思わず苦笑いでした。
3.  今回の受検では、学生、会社員など幅広い年代の人たちがこの試験を受検していること、しかも3級ということもあってか、みなさん比較的気軽に、楽しみながら受検している雰囲気だったのが印象的でした。知的財産管理技能士の技能検定は、3級、2級、1級とあり、3級が一番簡単なのですが、こういった気軽に受けられる試験を設定して、知的財産権に対する一般市民の知識レベルの底上げを図っていくことは、将来の日本にとってきっと役立つのではないかと感じた次第です。

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posted by 中村千之 at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2008年04月27日

中国法務の現状と仲裁手続き

1. 弁護士を対象として、中国法務の現状についてのレクチャーが4月23日に弁護士会で開催されたので出席しました。中国法務の最先端で活躍する3名の弁護士が、自らの経験をもとにお話された内容は、我々実務家にとって、大変参考になるものでした。

2. 特に、中国企業との契約においては、CIETAC(中国国際経済貿易仲裁委員会)の仲裁条項を規定しておくことが重要であることは再認識させられましたし、日本の裁判所で勝訴判決を取得しても、それが中国では執行できないらしいことは、自分も注意しなければならないと認識しました。中国法関連の業務では、私も数年前に、中国の会社を第三債務者とする債権について譲渡担保権を設定したことがあったのですが、そのときも中国法弁護士のアドバイスを得て、日本法と中国法と両方の対抗要件を満たすようにしたことがありました。中国法に限りませんが、日本法以外の外国法が関連するときは、日本法的な考え方が通じない場合もあるので慎重な対応が必要だと感じています。

3. ところで、「喧嘩の仲裁」という言葉の印象からか、「仲裁手続き」というと、話し合いや調停のような手続きを想像する方も多いかもしれませんが、私が経験した日本商事仲裁協会(JCAA)やパリに本部を置く国際商業会議所(ICC)の仲裁手続きは、実質的には裁判所の訴訟手続きと同様の手続きです。仲裁の申立人が原告と同じく請求原因事実を主張立証し、被申立人が被告と同じくこれを争うことになります。

4. 仲裁手続きは、未だ多くの企業にとってなじみの薄い手続きと思われます。しかし、@判断を下す仲裁人を当事者が選択できること、A公開手続きを前提とする裁判所と異なり非公開であること、B仲裁判断という判決と同様に強制執行できる判断が得られること、C基本的に上級審による判断がなく、仲裁判断一審のみで終了すること、などの特徴が生かされていけば、裁判所以外の有力な紛争解決方法として、企業間の紛争で多々利用されていくものと思われます。
posted by 中村千之 at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2008年03月18日

いまさら聞けない「公益認定法人って何ですか?」

1. いまさら聞けない「公益認定法人って何ですか?」
良く聞いてくれました。

2. 昔から六法全書を読んでいる方々の中には、民法38条から84条の社団法人・財団法人の規定が削除されているのを見て驚いた方もいらっしゃるかもしれません。

3. 民法上の法人は、公益を目的とした法人に限られ主務官庁の許可を得て設立されていました(旧民法34条)。しかし、行政改革の一環として、官庁の許可制を改め、法人設立と公益性の認定とを分けたのが今回新しく制定された「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」(以下「一般法人法」といいます。)、「公益社団法人および公益財団法人の認定等に関する法律」(以下「公益法人認定法」といいます。)です。

4. 一般法人法と公益法人認定法は、平成18年6月2日に公布され、新法が施行されるのは2年6ヶ月以内とされていますから、遅くとも平成20年12月には施行されます。新法施行前に旧民法34条に基づき設立された既存の公益法人については経過措置として5年間の移行期間の猶予があり、その間に行政庁の認定を受けて公益法人認定法上の公益社団法人、公益財団法人となるか(整備法44条)、または、行政庁の認可を受けて一般社団法人、一般財団法人へ移行することになります(整備法45条)。移行期間内に認定、認可を受けないと移行期間満了とともに解散することになってしまいます(整備法46条1項)。

5. 現在、多くの民法上の公益法人が、新制度移行に向けて試行錯誤しているようです。特に、公益認定法人としての認定を受けるためには、例えば、「公益目的事業比率が100分の50以上となることが見込まれること」(簡単に言えば、法人の費用の50%以上が、公益目的事業に使用されていなければならないということです。)といった要件があったり、このほかにも多数の認定要件を全てクリアできるのか、要件をクリアして公益法人の認定を受けることにどれだけのメリットがあるのかなど、多くの法人が、様々な観点から検討をしている模様です。 
                           以上
posted by 中村千之 at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 商標法

2008年02月11日

いまさら聞けない「並行輸入って何ですか?」(2)

1. 真正品の並行輸入について、違法性が阻却される場合があるとして、どういう場合が「真正品」なのでしょうか?

真正品の典型は、海外の商標権者A社が、自らA社の商標を付して製品を製造、販売している場合です。 

2. また、例えば、海外における商標権者がA社で、A社の商標を付した製品を製造、販売しているのがB社だとします。B社がA社から商標使用のライセンスを受けてライセンス契約に従って製造していれば原則として真正品といえますが、気をつけなければならないのは、ライセンス契約違反があるとライセンシーたるB社が製造したものでも真正品と認められない場合があることです。例えば、ライセンス契約上ライセンシーが製造を許諾されていない国で製造した製品の輸入につき、真正品の並行輸入とは認められないとした最高裁判所の判例があります。

3. ライセンス契約違反がないかどうかは、製品の購入者には判らないので、この点は、並行輸入業者が、輸入した後から「あなたの販売しているのは真正品ではありませんよ。」と言われたりするリスク要因となりかねません。並行輸入業者としては、輸出業者との売買契約などで、売主に表明保証させるなどして、契約上のリスクを補完する必要があります。
posted by 中村千之 at 14:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 商標法

2007年12月27日

いまさら聞けない「並行輸入って何ですか?」(1)

1.良く聞いてくれました。
 並行輸入品というのは、外国で製造されたブランド品を、ブランド会社と直接契約をした人(いわゆる「正規代理店」と呼ばれたりします。)以外の人が輸入して日本で販売している製品のことです。外国で合法的に製造された真正のブランド品の輸入であるという点で、偽物の輸入とは異なります。
 どうして、並行輸入が商売になるかというと、円高などの影響もあってか、同じ商標(トレードマーク)を付した製品でも、日本で購入するよりも海外で購入した方が安く買えたりするからです。私は、釣り、テニス、ゴルフが趣味なのですが、例えば、日本でも売っているブランドのゴルフクラブやテニスラケットを、アメリカに旅行したついでに買ったりした場合、日本より安く購入できたりすることがあります。これを商売としてやっているのが、いわゆる並行輸入です。
 正規代理店としては、ブランド会社に商標使用の対価を払いつつ、日本でブランドを紹介し、その価値を高め、維持することに多大な費用をかけてブランド品を扱っているので、せっかく努力して高級イメージを出してるのに、安値で並行輸入品が出回ってはたまらない、ということになります。一方で、消費者としては、同じブランドの製品が、より安い値段で買えるのならそれも良いかな、ということになりましょうか。それぞれの立場で利益が微妙に衝突する問題です。

2. なお、並行輸入が法律上の問題を引き起こすのは、商標(トレードマーク)についての権利である商標権について登録制度が採用されており、同じマークでも、日本と外国で商標権者が異なることがありえるからです。例えば、同じマークについて、米国ではA社が商標権者として登録し、日本ではB社が商標権者として登録したとします。私がA社の製品を輸入して日本で販売しようとすると、A社が製造した真正品で米国ではホンモノあっても、日本ではB社の商標権を侵害する「違法なもの」ということになってしまいます。ただ、例えばB社がA社の日本における子会社であったりしてブランドの出所が同じで、B社の製品とA社の製品で品質に違いがないような場合にまでB社に商標権侵害を主張させなくてもいいんじゃないの、ということで、このような場合には違法性が阻却され、適法な真正品の並行輸入と解されています。
posted by 中村千之 at 16:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 商標法